■ 余談49 犬のマイクロチップ登録制度 ■

2022年6月からブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫に、マイクロチップの装着が義務化されました。
これは2019年6月公布「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部改正」の施行によるもので,大きな災害時に多くの犬や猫が飼い主不明のまま彷徨ったことを契機の改正といってよいと思われます。(もうひとつはペットの遺棄防止)
 コード
マイクロチップは直径1.4〜2mm、長さ8〜12mmの円筒形(ISO規格)で、ペットの首・肩附近に注射器で埋込み,いざというとき読取機でチップに記録された15桁の数字を読み,別途に登録しデータベース化されたペット情報と照合するものです。
(15桁中の個体識別番号が8桁で足りる?という疑問がある→→2021年の国内犬だけでも710万頭!)

チップに内蔵されたコイルに読取機から送る電磁波で電流を発生させ,内蔵メモリの回路を動かして逆送信させる。
これは車の製造工場などで部品の識別化に使うRFIDシステム(Radio Frequency IDentification)と呼ばれるものと同じで,チップに電源は要らず,10cm程度離れた距離からでも数字を読み取れます。
ただ工場生産システムと違って,内蔵情報の書き換えはできないと思われます。(その方が安全)

マイクロチップの登録は「環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室」の管轄なのですが,具体的には公益社団法人「日本獣医師会」が運用(埋込・登録)するようです。
読取りは普通は獣医等でやってもらうでしょうが,読取機だけならamazonで¥4000くらいから買えます。
数字を読取るとアラームが鳴る⇒⇒⇒ amazon マイクロチップリーダー
ところで,この日本獣医師会には,AIPOというすでに運用されているマイクロチップ登録システムがあるのです。
(AIPO:Animal ID Promotion Organization ・・・動物ID普及推進会議:公益4団体の連合組織)ID
ウチの犬の場合は,NPOから引き取った時点でAIPOのマイクロチップが埋め込まれており,ついてきた登録書類に書き込んで送ったところ登録確認のハガキが送られて来ました。(右画:ただしこの生年月日は適当)

で,困ったことに,このID番号は今度の環境省のマイクロチップ登録とは運用システムが違うのです。
日本には他にも,Fam(Family association of management)とかJKC(JAPAN KENNEL CLUB)などの運用する登録システムがあり ,みな独自のデータベースのようです。
本来の目的からすれば,すべてに登録すればいいのでしょうが,それはなんとも大変。(できるかどうかも不明)
比較的普及度の高いと思われるAIPO(犬:220万頭)でしたが,新しい登録制度とは違うのか・・・まあしょうがないなと思っていたら,なんと無料で登録を移行できたのです。
けれど,それを知ったのはつい先日で,なんと移行登録の期限(6月30日)が終わっていた!!!
 参考:環境省データベースへの移行登録受付サイト

「2022年6月からペットのマイクロチップ義務化」のニュースはあちこちで見聞きしましたが,すでに埋め込まれているチップについての話は出てきませんでした。
そりゃ詳細(環境省の宣伝チラシ等)をちゃんと確認しなかったこちらのミスと言われるでしょうが,6月から義務化が始まったのに7月になったら既存チップの移行期間はすでに終了しました・・・ってひどくないか?
ま,環境省としてはメンドーな一斉登録を少しでも早く終わらせたかったのでしょうが。
2019年6月の”動物愛護法の一部改正”については,マイクロチップの他にも注意すべき点・問題があるのですが,特に生後8週未満の犬・猫の販売禁止というのがあります。
これはペット先進国で主流となっている法令に沿った改正で,すでに2021年6月から実施済です。
が,この8週(56日)を定めた第22条の5の条文には例外規定(附則)があるのです。

“専ら文化財保護法(略)第百九条第一項の規定により天然記念物として指定された犬(略)の繁殖を行う第二十二条の五に規定する犬猫等販売業者(略)が、犬猫等販売業者以外の者に指定犬を販売する場合における当該指定犬繁殖販売業者に対する同条の規定の適用については、同条中「五十六日」とあるのは、「四十九日」とする。”

( )部分を3つ省略しましたがこういう条文はわかりにくい・・・とにかく天然記念物は特例で7週未満が販売禁止。
天然記念物とは,柴犬、秋田犬、紀州犬、甲斐犬、四国犬、北海道犬の6種類で,この7日の差は子犬には結構重要。
なんで日本犬だけ?というおかしな附則は,この議員立法の成立直前になって自民党の2議員が強引にねじ込んだもので「8週齢規制 例外」で検索するとたくさん出てきてその経緯や疑問点がわかります。

その一目惚れ、迷惑です。」 いっときTVや新聞等に見たこのキャンペーンで出てくるのはたいてい子犬です。
ペット販売業者について言われる「抱かせてしまえば勝ち」の商法も子猫・子犬が対象で,幼齢の可愛さに頼る危険な実態は,誕生日偽装問題や生体販売そのものの問題など,矛盾を抱えたまましばらく続きそうです。
2022.07.07UP ■ 余談一覧に戻る■
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