■ 余談53 ひきこもり保護犬その後 ■

余談No43で書いた保護犬ですが,2年半以上過ぎた今も食事と水飲みと散歩以外は一日じゅう自分の寝床にこもる生活が続いています。
(左下は引取前2020.11月のプロフィール画像)
九州から来たこと(右画)以外何もわからないのですが,NPOに5〜6歳くらいと言われたので,今は8〜9歳になってる計算です。でも,鼻の周囲が白くなってきたことから,もう少しトシかもしれない。
甲斐犬mixと言われてましたが,表毛がやわらかで下毛が薄く春・夏の換毛期がはっきりしないことを見ると,かなり洋犬の血が濃いのかもしれません。
でも顔つき・体型は甲斐犬ぽいので,たまに「甲斐犬?」と声をかけてくる人もいます。
足先と胸・尻尾のウラ白以外はほとんど黒一色なので,黒の甲斐犬(注1)を知らない人には犬種不明でしょう。(オーストラリアンケルピーの入ってる可能性もありますが)

さてこの犬,引取った当初はものすごく警戒心が強く怖がりで,散歩もまともにできませんでした。
しっぽは常時後足の間,人の顔見るばかりで,こちらの動作一つにビクビク怯え,排泄以外は外界に興味なし。
引っ張らないと寝床から出ない,子どもや自転車から逃げ出す,後ろに回られるのが大嫌い,他の犬とも接触を嫌がり,草地は苦手。
過去の犬たちは,成犬でもモノやヒトと「遊ぶ」ということが多少なりともあったのですが,それがまったくないのも特徴的。
まともに人と触れあうことなく閉鎖した場所でご飯だけ与えられて,周囲の環境に興味を失ってしまった過去があるように思われます。
顔に大きな傷跡があるし,上の前歯が数本欠けている,下の牙が一本細く削れていることを見ると,何らかの虐待があったのかもしれない。

冒頭に記したように室内では引きこもりなんですが,今では散歩だけは自分から積極的に出かけるようになりました。
年1〜2回程度の食欲不振はあるものの,春の狂犬病&各種ワクチン注射/フィラリア・ダニの予防薬受取以外で獣医に掛かることもなく,食欲旺盛で元気です。
1年過ぎる頃から,やっと散歩で草やモノに興味を示し盛んににおいをかぐようになり,尻尾が水平〜45度に上がるようになりました。
そして2年を過ぎる頃から,後ろ姿を見せて歩くことが平気になりました。(右画:クリックしてmp4動画)
外では普通に飼い犬の散歩姿ですが,過去のトラウマなのか,今のところ飼い主にも気を許すことがないようです。
もちろん,他の人に愛想を見せるはずもなく,特に自転車と子どもと人混みは嫌い,他の犬に興味はあるようですがただそれだけ。
せめて芸の一つくらいと「お座り」「お手」「替え手」を仕込もうとしますが断固拒否,何を言っても横向いて知らぬ顔(!)します。
散歩中必要な「待て」も,少し離れると即動いてしまうのでリードは離せないし,帰って放せば寝床に飛び込んで引きこもりに戻ります。
こういう個性だと思って気長に付合ってますが,ここまで人との触れ合いを拒否する犬は珍しいかも・・・頑固な日本犬らしい?
注1.甲斐犬の(悲しき)体毛特徴
今年(2023)八王子で見つかったブリーダー?崩壊(100頭以上の甲斐犬中心の飼育放棄)では,ニュース映像で黒一色の犬がかなり多いように思われました。
同じ血筋で生まれても,全身黒いだけで甲斐犬と認められず売れ残ってしまう!というのは何か間違ってます。
しかし,甲斐犬の品評会では虎毛以外は即欠格扱いで甲斐犬と認定しないようです。
同じように血統書付の親犬から生まれる白一色の「雪甲斐犬」ってのもあるようですが,やはり血統書は出してもらえません。
(アメリカでは大人気のためホントのニセモノ?が売られるという皮肉な話もあるらしい)
さらに,生まれてすぐ虎毛の出る子犬はまれで,一色の毛色が成犬になって虎毛となる(かもしれない)という,運のみで決まる血統書とは何?と思います。
6種の天然記念物日本犬の認定(1931〜1936)はかなり曖昧な基準で決まったようです。(固有種を保護すること自体は否定しませんが)
余談の余談:「日本犬」の定義自体が秋田犬保存会・日本犬保存会による恣意的な限定によるもので,実際の各地の固有種を無視しています。
今さら日本犬の種類は増えないでしょうが,個人的には「川上犬」(長野県天然記念物),「琉球犬」(沖縄県天然記念物),「狆」(平安初期から座敷犬として愛された日本の固有種)までは日本犬に入るかな?と思っています。
参考・日本犬の誕生:純血と選別の日本近代史/志村真幸 勉誠出版(2017)
  ・日本の犬:人とともに生きる/菊水健史他 東京大学出版会(2015)
  ・愛犬王平岩米吉伝/片野 ゆか 小学館(2006)
2023.07.18UP ■ 余談一覧に戻る■
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